「独立して、一人で居宅介護支援事業所をやった方が楽なんじゃないか」
主任ケアマネや管理者として働いていると、そう考える瞬間はないでしょうか。
終わらない会議。
特定事業所加算の管理。
職員対応。
研修。
人間関係。
利用者支援そのものより、“組織を回すための仕事”に時間を取られている感覚になることもあります。
私自身、医療法人の居宅介護支援事業所で管理者をしながら、「独立したらどうなるのか」を何度も考えてきました。
そこで今回は、現在年収400万円台の主任ケアマネ管理者が、一人で居宅介護支援事業所を開業した場合、本当に生活できるのかをリアルに計算してみます。
夢ではなく、かなり現実的な数字で検証します。
35件では厳しい。45件近くでようやく会社員並み
先に結論を書きます。
主任ケアマネ1人で独立した場合、利用者35件前後では、現在の管理者年収400万円台と同等レベルの生活維持はかなり厳しいです。
社会保険料、経費、税金を考えると、自由に使えるお金は想像以上に少なくなります。
一方で、
・通勤ストレスが消える
・人間関係が減る
・自分の裁量で働ける
という大きなメリットもあります。
つまり独立は、「収入アップ」よりも「働き方を変えたい人」に向いていると感じます。
居宅介護支援事業所は個人事業主では開業できない
まず大前提として、居宅介護支援事業所は個人事業主では開業できません。
介護保険法により、「法人格」が必要になります。
つまり、独立する場合は以下のどちらかを設立する必要があります。
| 法人格 | 特徴 |
|---|---|
| 株式会社 | 一般的だが設立費用が高い |
| 合同会社 | 設立費用が安く、一人開業向き |
一人ケアマネでスタートするなら、現実的には合同会社がかなり有力です。
設立費用も抑えられ、意思決定も早い。
「まずは小さく始める」という意味では合理的だと思います。
開業初年度はかなり厳しい
独立を考える時、多くの人が見落としがちなのが「最初の利用者確保」です。
開業直後から35件埋まることは、まずありません。
地域包括支援センター、病院、訪問看護、デイサービスなどに挨拶を繰り返し、少しずつ信頼を作っていく必要があります。
例えば開業直後で平均7件程度だった場合。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 月間売上 | 約6〜8万円 |
| 月間経費 | 約10万円 |
| 利益 | 赤字 |
かなり厳しいです。
特に怖いのは、「利用者0でも固定費は発生する」ということ。
・介護ソフト代
・電話代
・車両維持費
・保険料
・家賃
・ガソリン代
これらは毎月出ていきます。
つまり、独立直後は“貯金を削りながら耐える期間”が必要になります。
35件担当した場合のリアルな収支
次に、ある程度軌道に乗ったケースを考えます。
今回は以下の条件で試算しました。
・要介護1〜2:12名
・要介護3〜5:13名
・要支援委託:10名
・特定事業所加算なし
・初回加算あり
この場合の売上はおおよそ以下です。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 月間売上 | 約37万円 |
| 月間経費 | 約10万円 |
| 事業利益 | 約27万円 |
ここだけ見ると、
「意外といけそう」
と思うかもしれません。
しかし、ここから社会保険料が重くのしかかります。
独立ケアマネは社会保険料の負担が重い
会社員時代は、社会保険料の半分を会社が負担してくれていました。
しかし独立すると、その会社負担分もすべて自分で払うことになります。
例えば、自分の役員報酬を月25万円に設定した場合。
健康保険と厚生年金の合計は、おおよそ月7.5万円前後になります。
つまり。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 事業利益 | 27万円 |
| 社会保険料総額 | 約7.5万円 |
| 実質的な残り | 約19.5万円 |
ここからさらに、
・所得税
・住民税
・法人税
も発生します。
つまり、35件担当しても「思ったほど残らない」というのが現実です。
年収400万円台を維持するには45件近く必要
では、現在の管理者年収400万円台と同等レベルを維持するにはどうなるのでしょうか。
計算すると、年間売上600万円前後が一つのラインになります。
これを月換算すると約52万円。
平均単価11,500円程度で計算すると、必要件数は約45件。
つまり。
「ほぼ上限件数を維持し続ける」
必要があります。
これはかなり大変です。
しかも一人居宅の場合、
・営業
・請求
・加算管理
・記録
・契約
・苦情対応
・実績管理
全部一人です。
正直、45件近くを抱えながら請求や営業まで1人でやると、「自由」というより“ずっと仕事のことを考えている状態”になる気がします。
それでも独立には魅力がある
ここまで読むと、
「独立なんて無理じゃないか」
と思うかもしれません。
ただ、実際にはお金だけでは測れない魅力もあります。
特に大きいのは、
・通勤時間が減る
・職場の人間関係から解放される
・自分のペースで動ける
この3つ。
特に地方では、片道40分〜1時間通勤しているケアマネも珍しくありません。
毎日の通勤だけで、かなりの体力と時間を消耗します。
独立して地域密着で動けるようになると、このストレスはかなり減ると思います。
一人ケアマネにAIはほぼ必須になる
一人居宅最大の問題は、「事務量」です。
訪問、記録、モニタリング、請求、加算。
全部一人。
利用者40件を超えると、かなり厳しくなります。
ちなみに、私自身かなり助けられているのが、AIボイスレコーダーの「PLAUD NOTE」です。
訪問時の会話を録音しておくと、AIが要約してくれるため、モニタリングや支援経過の下書き作成がかなり楽になります。
特に一人居宅の場合、“記録時間を減らせる”ことはそのまま自由時間に直結します。
独立後は特に、
“自分の時間を増やす投資”
が重要になると思います。
独立は「逃げ道」ではなく「働き方の選択」
正直に言えば、私自身も独立を何度も考えてきました。
ただ、実際に数字を計算してみると、“自由”と引き換えに背負う責任はかなり重いと感じます。
特に、利用者45件近くを1人で抱えながら営業・請求・記録・加算管理まで行う生活は、想像以上に厳しいでしょう。
それでも、
・通勤から解放される
・自分の裁量で働ける
・無駄な会議が減る
この魅力は確かにあります。
だからこそ独立は、
「今が辛いから逃げるため」
ではなく、
「どんな働き方をしたいのか」
を考えた上で選ぶべきだと思います。
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