まず初めに、このたび亡くなられたケアマネジャーの方へ心よりお悔やみ申し上げます。

夕方、仕事を終えて帰宅した時でした。何気なく流れていたニュースを見て、私は絶句しました。

女性のケアマネジャーが訪問先で首を刺され亡くなられた…という報道でした。

利用者の息子に襲われたとのことです。

詳細は分かりません。
だけど自分自身が利用者宅を訪問している姿を想像してしまいました。
そして、同じ事業所で働く職員たちの顔でした。

私たちケアマネジャーは毎月利用者宅を訪問します。一人で玄関を開け、一人で話を聞き、一人で車に戻ります。それが当たり前の日常になっています。
だからこそ今回のニュースは他人事とは思えませんでした。
長年この仕事を続けてきましたが、言葉を失うニュースでした。

介護業界では過去にも訪問介護員が利用者や家族から暴力被害を受けた事件や、女性職員が性的被害に遭った事件が報道されてきました。

ニュースにならないだけで、暴言や威圧的な言動、理不尽な要求に苦しんだ経験のある介護職は少なくないと思います。

それでも私たちは利用者の生活を支えるため、義務である利用者宅へ毎月必ず向かいます。

今回のニュースを見ながら、改めて考えました。

私たちは誰かに守られているのだろうか、と。

ケアマネには逃げ場がない

長くケアマネをしていると、制度の限界と利用者や家族の思いの間に立たされる場面が何度もあります。

施設へ入れたいが空いていない。ショートステイを増やしたいが満床。

病院は退院を求めている。家族は限界を迎えている。
しかし、その全てを解決できる権限はケアマネにはありません。

それでもどうにかしろと電話が鳴るのはケアマネです。
利用者からも。家族からも。病院からも。サービス事業所からも。

私はこれまで本当に様々な利用者や家族と関わってきました。

感謝されることも多々ありました。
一方で、何度説明しても納得されないこともありました。
事業所を何度も変える人。担当者を次々と交代させる人。誰かを責めなければ気が済まない人。

そうしたケースも決して珍しくありません。

それでも担当になった以上、簡単には離れられません。

それが居宅介護支援事業所の現実です。

介護職の安全は昔から後回しだった

今回の事件を見ながら感じたのは、介護職の安全は昔から後回しにされてきたのではないかということでした。

訪問介護員への暴力。セクシャルハラスメント。

暴言。長時間拘束。人格否定。

現場では珍しい話ではありません。しかし多くの場合、表に出ません。

利用者だから仕方ない。
認知症だから仕方ない。
家族も大変だから仕方ない。

そんな言葉で福祉の現場では職員が飲み込んできた部分が多くあります。

もちろん利用者支援は大切です。
しかし利用者を支える職員も同じように守られるべき存在ではないでしょうか。

利用者を守る制度はたくさんあります。一方で、介護職を守る制度は十分とは言えません。
今回の事件は、そのことを改めて考えさせられました。

毎月訪問義務について考えてしまった

ここは誤解してほしくありません。

私はモニタリングが不要だと言いたいわけではありません。
身体状態の確認は重要です。虐待の早期発見も重要です。

しかし現場にいると考えてしまうことがあります。

本当に毎月訪問が必要なケースばかりなのだろうか。
状態が安定している利用者。
家族関係も落ち着いている利用者。
電話やICTで十分に状況把握できる利用者。

そうした方にも毎月、毎月、自宅への訪問が求められています。

その一方で、本当に支援が必要なケースへ十分な時間を使えないこともあります。

そして何より、訪問は基本的にケアマネ一人でお邪魔します。

何かが起きてもその場には誰もいません。

今回のニュースを見て、訪問支援のあり方そのものについて考えさせられました。

管理者として職員を守れるのか

ニュースを見た夜、私は管理者として考え込みました。

もし担当者が自分の事業所の職員だったら。
もし訪問していたのが自分だったら。

正直、完全に防ぐ方法は思い付きません。

利用者宅の中で起きることを事前に予測するには限界があります。
それでも出来ることはあると思います。

危険なケースの情報共有。
一人で抱え込ませない体制。必要時の同行訪問。
包括支援センターとの連携。

そして何より、職員が「怖い」と言える職場であること。

介護職は真面目です。だから我慢してしまいます。
しかし我慢は解決ではありません。

利用者を守ることと同じくらい、職員を守ることも管理者の仕事だと改めて感じました。

↓ 訪問時の記録や緊急時の備えとして準備している事業所もあります

独立を考えていた私は答えが分からなくなった

実は私はここ数年、何度も独立について考えてきました。


一人で居宅介護支援事業所を開業する。
通勤のない生活を送る。
自分の裁量で働く。

そんな未来を何度も想像してきました。

しかし今回のニュースを見て、別の現実も見えてきました。
独立すると逃げ場がなくなります。職員もいません。管理者もいません。相談相手もいません。

利用者対応も。クレーム対応も。緊急対応も。全て自分一人です。

自由を手に入れる代わりに、一人で背負うものも増える。その現実を改めて突き付けられた気がしました。だから私は今も答えが出ません。

独立したい気持ちはあります。しかし今回のニュースを見て、また考え込んでしまいました。

私たちも守られるべきではないだろうか

介護職は利用者を支える仕事です。
ケアマネジャーは利用者と家族を支える仕事です。

だからこそ、その支える側も守られなければならないと思います。

今回の事件について憶測を語るつもりはありません。
ただ、このニュースを見て不安になったケアマネは少なくないはずです。

管理者であれば、自分の職員の顔が浮かんだはずです。
そして訪問系サービスに関わる職員なら、自分自身を重ねた人も多かったのではないでしょうか。

今回の出来事をきっかけに、介護現場の安全について改めて議論されることを願っています。

まとめ

改めて、亡くなられたケアマネジャーの方へ心よりお悔やみ申し上げます。

今回の事件は私にとって単なるニュースではありませんでした。
利用者宅へ向かう自分自身の姿。職員たちの姿。
そして独立を考えていた自分自身の未来まで重なって見えました。

自由な働き方に憧れる気持ちは今もあります。

しかし今回のニュースを見て、また答えが分からなくなりました。

利用者を守る。家族を支える。それは大切なことです。

だからこそ、その支える側の安全についても、もっと真剣に考えられる社会になってほしいと思います。