2027年度の介護報酬改定で、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネジャーでなくてもよくなるのでしょうか。
厚生労働省は2026年10月19日の第271回社会保障審議会・介護給付費分科会で、管理者の主任ケアマネ資格要件を外し、ケアマネとしての実務経験5年等を求める案を示しました。さらに、特定事業所加算(Ⅰ)の重度者40%要件廃止、研修未受講に関する減算、オンラインモニタリングの手続きの見直しなども提案されています。
現役ケアマネや管理者、事業所を開設したい人に影響する内容です。ただし重要なのは、すでに法律が成立した改正事項と、今回の介護報酬改定で提案された内容は異なるという点。厚生労働省の資料をもとに、現時点の見通しを整理します。
この記事の確認基準日:2026年10月19日。第271回の公表資料に基づく解説であり、議事録の公開や最終決定を待つ段階です。
- 最初に確認:何が決まっていて、何がまだ案なのか
- 1.主任ケアマネの管理者要件がなくなる? 実務経験5年等への変更案
- 2.特定事業所加算(Ⅰ)の重度者40%要件を廃止する案
- 3.介護予防支援にも入退院・通院連携の加算を設ける案
- 4.介護保険と障害福祉サービスの調整業務も評価する案
- 5.オンラインモニタリングは「合意手続き」を柔軟にする案
- 6.更新制廃止は成立済み。しかし「研修未受講による減算」は新たな案
- 7.介護予防ケアマネジメントの市町村直接委託と「3分の1」の取扱い
- 同じ10月19日の分科会では、訪問介護・訪問看護なども議論
- 一人居宅の開業・管理者は、何を準備すべきか
- よくある質問
- まとめ:管理者要件の見直しだけでなく、居宅の働き方・報酬にも影響
- 参考・一次資料
最初に確認:何が決まっていて、何がまだ案なのか
「2027年度介護報酬改定」と「2026年に成立した介護保険法改正」は、重なるテーマがあっても同一ではありません。ニュースの見出しだけで「来年からすべて変更」とは判断できません。
| 論点 | 10月19日時点の状況 |
|---|---|
| 管理者の主任ケアマネ要件 | 「求めない」方針を提案。代わりに実務経験5年等を提案 |
| 特定事業所加算(Ⅰ)の重度者40%要件 | 廃止を提案 |
| 特定事業所加算(A) | 廃止と1年間の経過措置を提案 |
| オンラインモニタリング | 合意取得の手続き柔軟化を提案 |
| ケアマネ資格の更新制 | 2026年6月の法改正で廃止が成立。具体的な施行・運用は確認が必要 |
| 研修未受講者を配置した場合の減算 | 報酬上の新たな提案。減算率は未決定 |
| 介護予防ケアマネジメントの直接委託 | 法改正で可能とする仕組みが成立。担当件数の扱いは提案段階 |
主な根拠:第271回分科会・資料一覧、資料6「居宅介護支援・介護予防支援」(31・32・40・44・45ページ)。
1.主任ケアマネの管理者要件がなくなる? 実務経験5年等への変更案
現行の居宅介護支援事業所は、管理者に原則として主任介護支援専門員を配置する基準です。例外・経過措置はありますが、原則は変わっていません。
今回の対応案では、主任ケアマネは地域の関係者との連絡調整や人材育成を担い、事業所管理者は労務・財務管理等を担うという役割分担に着目し、管理者に主任ケアマネ資格を求めない方向が示されています。
| 比較 | 現行 | 見直し案 |
|---|---|---|
| 管理者の資格・経験 | 原則、主任ケアマネ資格 | ケアマネであり、5年の実務経験等 |
| 主任資格の位置づけ | 管理者の原則要件 | 管理者資格とは切り離す方向 |
| 施行時期 | 現行基準に従う | 未確定 |
「5年の実務経験等」の数え方や証明方法までは、今回の資料だけでは確定していません。資格取得後に5年経過しただけで自動的に管理者となれる、と解釈するのは早計です。
また、2021年3月31日時点の管理者を対象とする経過措置は、現行基準では一定の条件付きで2027年3月31日までです。新基準が正式決定するまでは、経過措置対象かどうかを含め指定権者に確認してください。
2.特定事業所加算(Ⅰ)の重度者40%要件を廃止する案
従来、特定事業所加算(Ⅰ)の要件の一つとして、利用者のうち要介護3~5の割合が40%以上であることが求められています。10月19日の案は、この割合要件を廃止するというものです。
例えば、利用者30人のうち要介護3~5が9人であれば、割合は30%。現行の40%要件は満たしませんが、この要件が撤廃されれば、重度者の割合そのものが算定を妨げることはなくなる可能性があります。ただし主任ケアマネや常勤職員など、そのほかの人員・運営要件がなくなるわけではありません。
厚労省の資料では、2025年10月サービス提供分に当たる集計で、特定事業所加算(Ⅰ)の事業所ベースの算定率が1.71%、加算(A)が0.89%でした。こうした低い算定割合も見直しの背景にあります。
特定事業所加算(A)の廃止案、24時間連絡体制の共同運用案も
特定事業所加算(A)については、廃止と1年間の経過措置が提案されています。一方、加算(A)で認められる24時間連絡体制や研修の他事業所との連携を、上位区分でも認める案が出ています。
さらに、地域の多様なサービスを「ケアプランに位置づけていること」から、地域福祉の主体を含む連携体制そのものを構築していることへ評価の考え方を変える案もあります。
つまり、単に40%の数字をなくすだけでなく、「重度者の比率」から「専門職の配置や地域での連携」へ評価軸を広げる議論です。具体的な加算額・条件は最終告示を待つ必要があります。
根拠:厚労省資料6・10、27、31ページ。関連記事:介護ニュースJoint(2026年10月19日)。
3.介護予防支援にも入退院・通院連携の加算を設ける案
要支援の利用者でも、入院・退院や通院時には医療と介護の情報共有が必要になることがあります。今回の案では、これまで居宅介護支援にある入院時情報連携加算、退院・退所加算、通院時情報連携加算、緊急時等居宅カンファレンス加算について、介護予防支援にも設けることが提案されました。
同時に、同一建物減算を介護予防支援にも導入する案があります。ただし登録施設介護予防支援については別途の議論が予定されており、全事業所に一律のルールが即座に適用されるわけではありません。
新たな加算の単位数や、実際の算定要件はまだ示されていません。居宅介護支援の加算と同額になるとも決まっていません。
根拠:厚労省資料6・32ページ。
4.介護保険と障害福祉サービスの調整業務も評価する案
65歳以上の利用者が介護保険サービスと障害福祉サービスを併用する場合、ケアマネは障害福祉サービス事業所や市町村担当窓口などとの調整を行うことがあります。
今回の資料には、こうした調整業務を介護報酬で評価する案が記載されています。どの調整を対象とするのか、加算なのか、必要な記録は何かといった細部は未確定です。
根拠:厚労省資料6・29、32ページ。
5.オンラインモニタリングは「合意手続き」を柔軟にする案
オンラインモニタリングは、2024年度改定で一定の条件付きで認められています。現行では、利用者の同意と、利用者の状態が安定していること、画面越しに意思疎通できること、サービス事業者から追加情報を得られることなどについて、関係者の合意が必要です。
2026年10月19日の提案は、主治医等を含む関係者から合意を得るための「手続きを柔軟に行える」と示すことです。
重要なのは、今回の対応案だけで「利用者の同意や関係者の合意が不要」「定期的な居宅訪問も不要」になるわけではないという点です。現行の居宅訪問頻度などの要件を混同しないようにしましょう。現行では、オンラインでモニタリングを行う場合でも、居宅介護支援は少なくとも2か月に1回、介護予防支援は6か月に1回の居宅訪問が必要です。
厚労省が掲載した令和7年度調査では、オンラインモニタリングを実施している事業所は2.7%にとどまります。実際の普及を妨げている条件に、今回の提案がどこまで対応できるかが注目されます。
なお、介護予防支援と居宅介護支援のケアプラン様式や業務のそろえ方については、今後調査研究を進める段階です。ケアプラン様式の統一が決定したわけではありません。
6.更新制廃止は成立済み。しかし「研修未受講による減算」は新たな案
ここは、今回の資料で特に誤解しやすい部分です。2026年6月に成立した法律では、ケアマネ資格の更新制の廃止と、定期的な研修受講を求める仕組みが盛り込まれました。事業者にも、研修受講のための時間確保や受講状況の確認などを求める方向です。
一方、10月19日の「介護報酬改定の対応案」では、別途、次の内容が提案されています。
- ケアマネを置く施設や事業所の人員基準で、定期研修を受講している者等の配置を求めること
- 管理者の責務に、ケアマネへの研修受講勧奨を加えること
- 正当な理由なく研修を受けていないケアマネを配置した場合、事業所の報酬を減算すること
減算率、どの研修・期間が対象になるのか、「正当な理由」の範囲や適用開始日までは決まっていません。2027年4月から直ちに未受講で減算、と断定することはできません。
以前の更新制の議論については、ブログ内のケアマネ更新制の見直しを取り上げた記事(2026年4月時点)も参考になります。今回は、その後の法成立と新たな報酬上の対応案を整理したものです。
7.介護予防ケアマネジメントの市町村直接委託と「3分の1」の取扱い
2026年6月成立の法改正では、居宅介護支援事業所が市町村からの直接委託によって、介護予防ケアマネジメントを行えるようにする仕組みが盛り込まれました。
これに対応し、10月19日の資料では、直接委託で担当する介護予防ケアマネジメントの利用者数に3分の1を掛け、人員基準や逓減制の取扱件数を算定する案が示されています。
例えば「要介護の利用者30人+直接委託の介護予防ケアマネジメント12人」なら、後者を4人分として取扱件数34人相当と計算するイメージです。ただし、これは提案された算定方法を当てはめた単純例であり、指定や契約、適用日などを含む実際の運用が決まったわけではありません。
根拠:厚労省資料6・43~45ページ。
同じ10月19日の分科会では、訪問介護・訪問看護なども議論
今回の会議は居宅介護支援だけではありません。居宅のケアマネジャーが関係する他サービスの主な対応案も押さえておきましょう。
| サービス | 提示された主な方向性(検討中) |
|---|---|
| 訪問介護 | サービス提供責任者の初回アセスメントの評価、一定条件下のオンライン確認の評価、定期巡回との連携など |
| 訪問看護 | 夜間・深夜の評価の見直し、残薬確認と医師・薬剤師への報告、認知症等への専門的支援の評価など |
| 居宅療養管理指導 | 管理栄養士による30分未満の指導の新たな評価、薬剤師の算定間隔の見直しなど |
これらも具体的な報酬単位数が最終決定したわけではありません。ほかの議題や過去の分科会資料も確認したい場合は、厚生労働省の分科会一覧から開催日ごとにたどれます。
根拠:第271回の訪問介護・資料1(23ページ)、訪問看護・資料3(33ページ)、居宅療養管理指導・資料5(12、16ページ)。
一人居宅の開業・管理者は、何を準備すべきか
主任ケアマネ資格要件の見直し案が実現すれば、管理者になれる人の範囲が広がる可能性があります。しかし、「主任ケアマネでなくても管理者になれる」ことと「特定事業所加算を算定できる」ことは別です。
また、加算(Ⅰ)の40%要件が撤廃されても、人員配置や地域連携など他の条件は残る見込みです。管理者の要件緩和だけで、事業所収入が自動的に増えることはありません。
経営面については、当ブログの主任ケアマネが独立すると年収はいくら? 一人居宅の収支を計算してみたも参考にしてみてください。この記事の試算は掲載時点の条件を使っているため、2027年度の正式な報酬が決定したら再計算する必要があります。
公開前・施行前に確認しておきたいチェックリスト
- 管理者の実務経験「5年等」の範囲・証明方法が正式に示されたか
- 現在の主任ケアマネ配置の経過措置対象か、指定権者に確認したか
- 特定事業所加算(Ⅰ)の人員・連携要件、加算(A)の経過措置が決まったか
- 研修の頻度・時間・受講期限と、未受講減算の詳細が示されたか
- オンラインモニタリングの合意の取得方法と居宅訪問頻度の基準が示されたか
- 介護予防支援の新たな加算と、直接委託時の取扱件数の計算が確定したか
よくある質問
2027年4月から主任ケアマネなしで居宅介護支援事業所を開設できますか?
10月19日の公表資料だけでは断定できません。管理者要件の見直しは提案段階であり、適用開始日、実務経験の算定方法、指定申請時の取扱いを確認する必要があります。
特定事業所加算(Ⅰ)の40%要件はもうなくなりましたか?
いいえ。現時点では廃止案です。正式な介護報酬告示・算定基準が改正されるまでは、現行の要件に従います。
研修に行かなかったケアマネを配置すると、すぐ減算されますか?
いいえ。「正当な理由なく受講していない者を配置した場合の減算」は新たな提案であり、まだ確定した減算ではありません。
まとめ:管理者要件の見直しだけでなく、居宅の働き方・報酬にも影響
2026年10月19日の第271回介護給付費分科会では、主任ケアマネの管理者要件を外す案、特定事業所加算の再編、研修未受講減算案、オンラインモニタリングの柔軟化、介護予防支援の医療連携評価など、居宅介護支援の運営に直結する複数の案が示されました。
ただし、法律が成立済みの部分と、報酬改定の検討案は切り分ける必要があります。報酬単位数や施行日などが正式に決まるまでは、管理者の配置変更や加算算定を前提とした経営判断は避け、厚労省・自治体の続報を確認していきましょう。
参考・一次資料
- 厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)一覧
- 第271回介護給付費分科会資料(2026年10月19日)
- 資料6 居宅介護支援・介護予防支援(改定の方向性)
- 資料1 訪問介護(改定の方向性)
- 資料3 訪問看護(改定の方向性)
- 資料5 居宅療養管理指導(改定の方向性)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(現行)
※本記事は2026年10月19日に公表された厚生労働省の審議資料等に基づいており、すべての提案が正式に採用されたことを意味しません。指定・算定・研修の詳細は今後の省令・告示・通知及び自治体情報を確認してください。