住宅ローンを抱えながら資産形成をしている家庭なら、一度は考える悩みではないでしょうか。私自身も何度も考えています。
ローン残高を見れば早く減らしたい気持ちになりますし、政策金利が上がるというニュースを見ると「繰上返済の方が安全ではないか」とも思います。そこに物価高が重なります。スーパーで会計金額を見るたびに「こんなに高かったか」と感じる一方、給料は同じようには増えません。
大企業の賃上げニュースは目にしますが、医療法人や社会福祉法人のように報酬が制度に左右される業界では、世の中の賃上げをそのまま実感できるわけではありません。処遇改善といっても、物価や住宅ローン金利の上昇に追いついている感覚はありません。
住宅ローン、教育費、老後資金の不安。そんな中で「NISAより住宅ローンを優先するべきでは」と迷うのは、投資の好き嫌いの話ではなく、家計を守る順番の話だと思っています。
結論:住宅ローン返済を最優先に、NISAも完全には止めない
先に結論を書きます。私の考えは「住宅ローン返済を最優先にしながら、NISAも完全には止めない」というものです。
返済を遅らせてまでNISAに回すのは違います。毎月の返済、生活費、教育費、最低限の現金。この順番は崩しません。その上で余力があれば、繰上返済だけに全振りせず、NISAも続けます。
理由は、繰上返済とNISAでは役割が違うからです。
繰上返済とNISA、役割の違いを整理する
- 繰上返済 = 借金を減らすお金
住宅ローンの元本を減らし、将来払う利息を確実に減らす行動。金融相場に左右されず、借金が減るほど気持ちも軽くなります。金利が上がっている時期ほど、この安心感は大きくなります。 - NISA = 将来の選択肢を増やすお金
将来使える資産を育てる行動。元本保証はなく、相場が下がれば評価額も下がります。それでも長い目で見れば、給料だけでは作りにくい資産を育てる場所になります。
どちらが正解かという話ではなく、役割が違うと考えると分かりやすくなります。
繰上返済は安心、でも手元資金が減る怖さもある
繰上返済の良さは分かりやすいです。元本が減れば利息も減り、借金が減る、完済が近づく。投資のように結果がぶれません。
ただし弱点もあります。一度返済したお金は、簡単には手元に戻せません。ローン残高は減っても、口座の現金は減ります。
40代後半の家計には、これから大きな支出がいくつも並びます。教育費、車の買い替え、家電の故障、家の修繕、親のこと、自分たちの老後。繰上返済だけに集中して現金が薄くなると、急な支出に弱くなります。「ローンは減ったが、手元にお金がない」という状態も、別の意味で怖いものです。
金利が上がったら、NISAをやめるべきか
ここは固定した答えを持たないようにしています。住宅ローン金利が低い時期は繰上返済よりNISAを優先しやすい場面もありますが、金利が上がれば繰上返済の価値も高くなります。
繰上返済は、ざっくり言えば「住宅ローン金利分の確実な効果」です。金利が1%台ならその分、2%、3%と上がればその分だけ意味が大きくなり、相場のように上下しません。
一方でNISAは将来増える可能性はあっても確実ではありません。長期では期待できますが、5年後、10年後に必ず増えているとは言い切れません。だから「金利が上がっても何が何でもNISA満額」という考え方は危ういと思っています。
判断材料は金利だけではありません。教育費が重なる時期か、現金は十分か、車の買い替えは近いか、家の修繕は必要か、自分の働き方に不安はないか。これらを合わせて見ないと、家計全体の判断を間違えます。
「満額NISA」より「続けられるNISA」
NISAの話になると「満額できるか」に意識が向きがちです。SNSでも満額投資や最速入金の話が多く出てきます。しかし住宅ローンと教育費がある40代家庭では、満額にこだわりすぎる必要はないと思っています。
大事なのは続けることです。月10万円が厳しいなら5万円、それも厳しければ3万円でいい。教育費や車の支出が重なる時期は、積立額を下げてもいいはずです。無理に積み立てて現金が足りなくなり、結局NISAを取り崩すなら本末転倒です。
NISAは気合いで続けるものではなく、家計に合わせて続けるものです。特に40代後半からの資産形成は、20年、30年先だけを見ていればいいわけではありません。教育費は近く、ローンも残り、車も必要で、働き方の悩みも出てきます。だからこそ、最大効率よりも「途中で折れない設計」が大事だと思っています。
55歳以降の「選べる働き方」のためにNISAを続ける
私が住宅ローンを抱えながらNISAを続ける一番の理由は、55歳以降の働き方を少しでも自由にしたいからです。今の仕事を続けるか、管理職を降りるか、通勤距離を短くするか、収入が少し下がっても体に合う働き方を選ぶか。完全に仕事を辞めるという話でなくても、将来「少し選べる」状態を作っておきたいのです。
ローン返済だけでは、この自由は作りにくいです。借金が減る安心は大きいですが、返済だけでは金融資産は増えません。家は残りますが、生活費として使えるお金は増えません。
一方でNISAだけを優先して現金がなくなるのも危険です。投資資産が増えても、急な支出のたびに取り崩していたら気持ちは落ち着きませんし、相場が悪い時に売ることになれば、何のために積み立てていたのか分からなくなります。
住宅ローン、現金、NISAのバランスを取りながら、少しずつ将来の逃げ道を作る。これが今の私にとって、現実的な資産形成です。大きく勝つより退場しない。満額より続ける。繰上返済だけでもなく、NISAだけでもない。その間に、自分の家計に合う答えがあるのだと思います。
まとめ
住宅ローンがあるならNISAより繰上返済を優先するべきか。簡単には決められません。
繰上返済は借金を減らす確実な安心で、金利が上がればその価値も高くなります。NISAは将来の資産を育てる手段で、今すぐ生活を楽にしてくれるものではありませんが、55歳以降の働き方を選ぶための準備になります。
私の答えは「住宅ローン返済を最優先にしながら、NISAも完全には止めない」。ただし満額にはこだわらず、教育費・現金・車・家の修繕・金利の動きを見ながら積立額を調整します。
住宅ローンがあるからNISAをやめるのではなく、住宅ローンがあり、給料も大きく増えにくく、物価も上がっているからこそ、NISAを完全には止めない。これが今の考えです。
もちろん迷いはあります。繰上返済の方が安心だと思う日もありますし、相場が下がれば不安にもなります。それでも、給料と現金だけに頼って将来を待つことの方が、私には怖く感じます。
次回は、住宅ローンの金利が何%まで上がったら繰上返済を考えるべきか、NISAの期待リターンと住宅ローン金利をどう比べるのか。感情ではなく数字で考えてみたいと思います。