2026年10月26日、厚生労働省の介護保険部会で、介護サービスの「2割負担」をどこまで広げるかという議論が続きました。
「年金がいくらあると2割負担になるの?」「来年から利用料が倍になるの?」「株の配当やNISAも関係する?」――本人や家族だけでなく、説明する立場のケアマネジャーも気になる内容です。
結論からいうと、2割負担の対象拡大は2026年10月26日時点で決定していません。
現行の基準は変わっておらず、所得基準を引き下げるか、負担が増える人への配慮をどうするかが検討されています。
今回の資料には、以前示された「単身260万円・250万円・240万円・230万円」の選択肢も参考資料として掲載されています。
この記事では、現行制度・検討案・実際の負担額を分け、家族やケアマネが今何を確認すればよいのか整理します。
確認日:2026年10月26日。第137回社会保障審議会介護保険部会「資料1」(10月26日公表)に基づきます。審議会で示された検討事項と、施行済みの制度は異なります。
まず確認:2割負担の対象拡大はまだ決まっていない
厚労省は10月26日、介護保険制度の持続可能性を議題として、利用者負担の判断基準と金融所得・金融資産の扱いについて資料を公表しました。
| 論点 | 10月26日時点の状況 |
|---|---|
| 2割負担の対象拡大 | 継続検討・未決定 |
| 新しい年収・所得基準 | 未決定。260万~230万円は過去の検討案 |
| 負担増を月7,000円までに抑える措置 | 過去に示された配慮措置案。未決定 |
| 預貯金が少ない人を1割に戻す仕組み | 過去に示された申請方式の案。未決定 |
| 株の配当・売却益の判定への反映 | 介護保険では将来的な導入を継続検討 |
資料では、2027年度から始まる第10期介護保険事業計画期間の開始前までに、2割負担の判断基準について結論を得るという従来の方針が改めて示されています。ただし、「結論を出す時期」と「実際に新制度が始まる日」は同じではありません。
現在は年金収入いくらから2割負担になる?
現行の介護保険の自己負担割合は、原則1割、一定以上所得のある65歳以上の人は2割、さらに所得が高い人は3割です。
2割・3割の判定は「年金収入だけ」では決まりません。本人の合計所得金額と、本人を含む同一世帯の65歳以上の人の年金収入+その他の合計所得金額の両方を見る仕組みです。
| 負担割合 | 本人の合計所得金額 | 年金収入+その他の合計所得金額 |
|---|---|---|
| 2割 | 160万円以上 | 65歳以上が本人だけの世帯:280万円以上/65歳以上が2人以上の世帯:346万円以上 |
| 3割 | 220万円以上 | 65歳以上が本人だけの世帯:340万円以上/65歳以上が2人以上の世帯:463万円以上 |
| 1割 | 上記の2割・3割の条件に該当しない場合など | |
※この表は主に65歳以上の第1号被保険者の判定基準です。40~64歳の第2号被保険者や住民税非課税の人などは取扱いが異なります。2割・3割の要件を両方満たすか、住民税の課税状況なども確認する必要があります。
例えば単身の方で年金収入が年250万円でも、現行制度で直ちに2割負担になるわけではありません。
逆に年金以外に給与や不動産などの所得があると、年金額だけでは判断できません。正確な割合は市区町村が交付する「介護保険負担割合証」で確認します。
見直し案は260万円・250万円・240万円・230万円の4パターン
10月26日の厚労省資料に再掲されたのは、2025年12月25日の部会資料で示された機械的な選択肢です。10月26日に新たな基準が決定したという意味ではありません。
| 単身の基準案 | 65歳以上が2人以上の世帯の基準案 | 新たに影響を受ける人数の粗い試算 |
|---|---|---|
| 260万円 | 326万円 | 約13万人 |
| 250万円 | 316万円 | 約21万人 |
| 240万円 | 306万円 | 約28万人 |
| 230万円 | 296万円 | 約35万人 |
※人数は厚労省が2025年12月に示した配慮措置①(月7,000円の負担増上限)を想定した粗い試算であり、実際に新制度で2割負担となる人数の確定値ではありません。ほかの配慮措置を組み合わせた試算では人数が変わります。
現行の単身280万円という基準を引き下げると、これまで1割負担だった人の一部が新たに2割負担になる可能性があります。ただし、実際の判定では本人の合計所得金額など他の条件もあるため、「年金230万円なら全員2割」ではありません。
2割負担になったら、利用料は月いくら増える?
負担割合が1割から2割になると、同じ介護サービスを利用した場合の保険対象部分の自己負担は、原則として2倍になります。イメージしやすいように、単純計算してみます。
| 月の保険対象サービス費用 | 1割負担 | 2割負担 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 5,000円 | 10,000円 | +5,000円 |
| 10万円 | 10,000円 | 20,000円 | +10,000円 |
| 15万円 | 15,000円 | 30,000円 | +15,000円 |
※独自の概算例です。高額介護サービス費の自己負担上限、区分支給限度基準額を超えた分、食費・居住費など保険対象外の費用は反映していません。現時点で負担割合が変わると決まったわけではありません。
毎月のサービス利用が長期にわたる介護では、数千円の差でも年間では大きくなります。例えば月5,000円の増加なら年間6万円です。
急な負担増を抑える「月7,000円上限」も検討
過去の審議資料では、新たに2割負担になる人について、当分の間、1割負担だった場合と比べた月々の負担増加額を最大7,000円に抑える配慮措置案が示されています。
例えば単純計算では月1万円の負担増になるケースでも、この措置がそのまま採用され、対象となれば負担増を7,000円までに抑える仕組みです。ただし、上限措置の採用・対象者・期間は未決定です。すでに実施されている制度として案内してはいけません。
もう一つ、預貯金等が一定額以下なら申請によって1割負担に戻す案も検討されてきました。参考資料には、単身300万円・500万円・700万円など複数の資産基準案が載っています。こちらも確定した条件ではありません。
株の配当・売却益やNISAは、介護保険の負担割合に関係する?
今回の資料では、2割負担の所得基準とは別に、金融所得や金融資産を介護保険の負担判定にどう反映するかも論点になっています。
現行制度では、上場株式の配当・売却益などを確定申告した場合は、原則として合計所得金額等に反映されます。一方、特定口座(源泉徴収あり)などで申告せずに課税関係が終了した金融所得は、現行の介護保険の所得判定には反映されていません。
| 金融所得・資産 | 現行の介護保険の所得判定 |
|---|---|
| 確定申告した上場株式の配当・売却益 | 原則として反映 |
| 源泉徴収で課税が終了し、申告していない配当・売却益 | 現状は反映されない |
| NISA口座内の非課税の運用益 | 所得として反映されない |
| 預貯金や保有株式の残高 | 通常の利用者負担割合の判定には現状反映されない |
ただし、特養などの食費・居住費の負担軽減に関わる「補足給付」では、預貯金等の資産要件があります。「2割負担の判定」と「補足給付の判定」を混同しないことが大切です。
厚労省は、金融所得を介護保険の負担判定へ将来的に反映することについて、後期高齢者医療制度での対応も踏まえながら検討を続けるとしています。NISAの非課税所得が今すぐ介護保険料や2割負担の対象になると決まったわけではありません。
家族・ケアマネジャーが今確認したいこと
- 現在の負担割合証を確認する。今の1割・2割・3割は、現行制度の負担割合証に基づきます。
- 保険対象のサービス費用と保険対象外の費用を分ける。食費・居住費などは負担割合が変わっても同じ計算ではありません。
- 高額介護サービス費などの負担軽減制度を確認する。単純な「2倍」だけで家計への影響を判断しないようにします。
- サービスを先に減らさない。制度が未決定の段階で、必要な訪問介護や通所介護を減らす判断は避けましょう。
- 最終決定と自治体通知を待つ。対象者、所得基準、施行日、配慮措置が正式に決まった段階で、本人・家族へ具体的に説明します。
介護報酬改定によるサービスの算定ルールの見直しについては、別記事の2027年度介護報酬改定のサービス別の検討案で整理しています。報酬改定と2割負担の対象拡大は別の論点なので、混同しないようにしてください。
介護費用を把握するための家計管理グッズ
負担割合の見直しが気になる方は、まず現在の介護費用を月単位で整理しておくと、将来の負担増を具体的に考えやすくなります。特別な商品を買う必要はなく、手持ちのノートや無料の表計算ソフトでも十分です。
紙で管理したい方には、コクヨ「キャンパス 家計簿」などの市販の家計簿が候補です。
介護サービスの自己負担、食費・居住費、医療費を別々に記録できるものを選びましょう。商品名・仕様・販売状況は購入前に確認してください。この記事の筆者が実際に使用した商品として紹介するものではありません。
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よくある質問
Q.2027年4月から、年金230万円の人は2割負担になりますか?
いいえ。2026年10月26日時点で、230万円という基準が採用されたわけではありません。これは過去に示された複数の選択肢の一つです。実施日も未決定です。
Q.負担が2割になると、介護費用は必ず2倍ですか?
保険対象サービスの自己負担は原則2倍になりますが、高額介護サービス費の上限などによって実際の負担増が異なる場合があります。食費や居住費などは別に確認が必要です。
Q.NISAを持っていると2割負担になりますか?
現在の通常の利用者負担割合の判定では、NISAの非課税運用益や保有資産残高を理由に2割負担となる仕組みではありません。
ただし、補足給付など資産要件のある別制度では、保有する金融資産の確認が必要です。
Q.ケアマネは利用者にどう説明すればよいですか?
「現在はまだ制度変更が決まっていません。負担割合証は今までどおり確認し、正式な改正と自治体通知が出たら改めてご説明します」と伝えるのが適切です。今すぐサービス利用を減らす必要はありません。
まとめ:数字だけを見て慌てず、決定と検討を分けよう
10月26日の介護保険部会では、2割負担の対象拡大や金融所得の扱いについて検討が続いています。過去に示された単身230万~260万円の案は、採用が決まった新しい基準ではありません。
今後の焦点は、所得基準をどこに設定するのか、負担増を抑える措置をどうするのか、そして実際にいつから適用するのかです。
本人や家族が不安になるニュースですが、今必要なのは、現在の負担割合証と家計への影響を確認し、正式な制度改正を待つことです。ケアマネジャーも「決定したこと」と「検討中のこと」を区別して説明していきたいところです。
参考資料
- 厚生労働省:第137回社会保障審議会介護保険部会(2026年10月26日)
- 同部会・資料1「持続可能性の確保(給付と負担)について」(現行基準36ページ、2025年12月の試算再掲40ページ、金融所得9ページ)
本記事は2026年10月26日公表の厚生労働省資料を確認して作成しています。今後の議論や法令・通知によって内容が変わる可能性があります。個別の負担割合は市区町村の介護保険担当窓口に確認してください。