介護施設や介護サービス事業所で事故が発生した際に作成する「事故報告書」。
この報告方法が、2027年度から大きく変わる可能性があります。
厚生労働省は2026年10月21日、**「介護保険最新情報Vol.1548」**を公表し、全国の介護事故情報を一元的に収集する新システムについて、2027年4月ごろから稼働する予定であることを明らかにしました。
同時に、事故報告書の新しい様式案も示されています。
今回注目したいのは、単なる報告書の電子化ではありません。事故発生前の利用者の状態、事故発生から対応までの経過、原因分析、再発防止策など、事故情報を整理・分析しやすくする方向で様式が見直されていることです。
ただし、2026年10月22日時点では新様式は検討・調整段階です。
2027年4月からすべての介護事業所で新様式の使用が義務化されると確定したわけではありません。
この記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、現在のルールと新様式案の違い、介護現場で確認しておきたいポイントを解説します。
2027年4月ごろ、介護事故報告の全国共通システムが稼働予定
厚生労働省が構築を進めているのは、「介護現場における事故情報報告システム」です。
このシステムは、既存の「介護サービス情報公表システム」のサブシステムとして整備される予定です。
これまで介護事故の報告は、市町村などの自治体がそれぞれの報告手続きに基づいて受け付けてきました。
新システムでは、事故情報を全国的に集め、事故の傾向や原因を分析して、介護現場に事故防止に役立つ情報を還元することが目指されています。
新システムの概要
| 項目 | 2026年10月22日時点の内容 |
|---|---|
| システム名称 | 介護現場における事故情報報告システム |
| 稼働予定 | 2027年4月ごろ |
| システムの位置づけ | 介護サービス情報公表システムのサブシステム |
| 主な目的 | 全国の事故情報の収集・分析と事故防止への活用 |
| 事故報告書 | 新様式案を公表、現在調整中 |
| 正式な運用開始日 | 未確定 |
| 具体的な入力・提出手順 | 今後の案内を確認する必要あり |
今回の発表では、システムの操作方法や自治体への従来の報告手続きがどのように切り替わるかまでは明らかになっていません。
そのため、現時点では従来の事故報告を継続し、自治体からの正式な案内を確認する必要があります。
介護事故報告書の新旧様式は何が変わる?
今回の資料には、新旧の事故報告書を比較した表が掲載されています。
従来の標準様式も事故状況、医療対応、原因分析、再発防止策などを記載する構成でしたが、新様式案では情報の取り方が一部変更・細分化されています。
主な変更点を整理しました。
| 比較項目 | 従来の標準様式 | 新様式案 |
|---|---|---|
| 利用者の基本情報 | 氏名・年齢・性別など | 氏名欄がなくなり、年齢・性別などを記載 |
| 事故発生日時 | 年月日・時刻 | 発生年月と2時間ごとの時間帯 |
| 事故発生前の状態 | 事故の詳細などに記述 | 事故発生前の状態を記載する独立項目 |
| 事故発生後の経過 | 自由記述が中心 | 時刻ごとの状況・対応を整理 |
| 事故の分類 | 事故種別を選択 | 事故種別の見直しと発生場面の分類を追加 |
| 原因分析 | 自由記述が中心 | 要因の観点を選択し、項目別に記述 |
| 再発防止策 | 自由記述が中心 | 要因別に取り組みを整理して記述 |
※厚生労働省が2026年10月21日に示した新旧比較表に基づく整理です。正式な確定様式ではありません。
変更点1:事故発生前の利用者の状態を記録
新様式案には、事故発生前の利用者の状況や状態を記載する項目が設けられています。
例えば、転倒事故なら、発生した事実だけでなく、普段との様子の違い、疲労、眠気など、事故直前の心身の状態を記録する形です。
事故は本人の身体機能だけでなく、体調や環境など複数の要素が関係して起こることがあります。
事故発生前の状態を整理しておけば、後の原因分析や再発防止の検討にも役立つと考えられます。
変更点2:事故発生からの対応を時系列で整理
新様式案では、事故発生時の状況や対応を時刻とともに記録できる欄が設けられています。
例えば、転倒事故が発生した場合、次のように記録する方法が考えられます。
- 10:15 居室内で転倒を確認
- 10:17 職員が身体状況を確認
- 10:25 看護職員へ報告し状態を確認
- 10:40 管理者と相談し医療機関への受診を調整
- 11:10 家族へ状況を報告
※上記は説明用の架空例です。実際の対応や報告の順序は、利用者の状態、緊急性、事業所の手順等によって異なります。
時系列で整理すると、事故が起きた事実だけでなく、その後にどのような判断と対応が行われたかを確認しやすくなります。
変更点3:事故原因を複数の観点から分析
新様式案では、事故の原因分析について、該当する要素をチェックし、項目ごとに具体的な内容を記載する構成が示されています。
主な分析項目には、次のようなものがあります。
- 利用者の行為や状態変化
- 組織運営体制
- マニュアル・手順
- 環境・設備
- 介護技術
- 職員間の連携・情報共有
例えば、転倒事故について「利用者が一人で歩いたため」と記録するだけでは、再発防止につながる情報が不足する場合があります。
利用者の体調、床面の状況、福祉用具の配置、職員間で共有していた情報などを確認することで、対応すべき課題が見えてくる可能性があります。
重要なのは、原因を決めつけたり、特定の職員の責任に帰したりすることではありません。確認できた事実と推測を分けて記録し、具体的な事故防止策につなげることが大切です。
介護事故報告書は5日以内?現在の報告ルールを確認
介護事故の報告について、「事故発生後5日以内」というルールを聞いたことがある方も多いと思います。
今回の新様式案にも、従来と同様、第1報については事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出する旨が記載されています。
これは2027年から新しく導入される期限ではありません。
2024年11月29日の厚生労働省通知ですでに示されている取扱いです。
第1報ではどこまで記載する?
国の標準様式では、第1報について、少なくとも次の1~6の項目を可能な限り記載することとされています。
- 事故状況・受診状況
- 事業所の概要
- 利用者の情報
- 事故の概要
- 医療対応の概要
- 事故発生後の状況
事故の原因分析や再発防止策については、時間を要することもあるため、作成できた段階で追加報告する取扱いです。
ただし、5日というのは第1報の提出目安であり、事故発生時の家族への連絡や必要な処置を5日間待ってよいという意味ではありません。
事故が発生した場合は、利用者の安全確保や必要な医療対応を優先し、市町村、家族などへの連絡についても速やかに対応する必要があります。
また、自治体によって報告対象、提出方法、期限などの運用が異なる場合があります。 実際の報告では各自治体の要領を確認してください。
どのような介護事故を報告する必要がある?
2024年11月29日の厚生労働省通知では、報告対象となる事故について、原則として次の2つが示されています。
1.死亡に至った事故
2.医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故
これら以外の事故については、自治体の取扱いによります。
また、事故の報告対象や手続きはサービス種別や自治体の要領も踏まえて確認する必要があります。
たとえば転倒したものの外傷が確認されなかったケースと、医師による治療が必要になったケースでは、判断が異なる可能性があります。
事故報告書の提出が必要か迷った場合は、事業所内だけで判断せず、自治体の担当窓口へ確認することが重要です。
ケアマネジャーにはどのような影響がある?
事故報告というと介護施設やデイサービスの業務をイメージするかもしれませんが、ケアマネジャーも利用者の事故情報を把握する機会があります。
例えば、利用中のサービス事業所で転倒が発生した場合、ケアマネは必要に応じて利用者や家族の状況、受診結果、サービス利用の継続に支障がないかなどを確認し、関係者と情報を共有します。
事故によって身体状態や生活状況が変化した場合には、ケアプランの見直しが必要となることもあります。
一方、今回の厚生労働省の事務連絡によって、居宅介護支援事業所に新たな事故報告義務が追加されたと確認できるわけではありません。
ケアマネとしては、従来の連携・記録業務を適切に行いながら、新システムの対象範囲や自治体の運用について続報を確認しておくとよいでしょう。
介護施設・事業所は今から何を準備すべき?
2027年度の新システムに備えるうえで、今すぐ必要なのは新様式への一斉切り替えではありません。
現行の事故対応マニュアルや報告体制を確認しておくことが現実的です。
1.自治体の事故報告要領を確認する
事故発生時の報告対象、提出先、期限、提出方法が最新の要領と一致しているか確認します。
2.事故記録の内容を見直す
事故発生前の状態、事故発生時の状況、その後の対応を客観的に記録できているか確認します。
3.原因分析と再発防止策を整理する
本人の状態だけでなく、環境、設備、介助方法、職員間の情報共有など、多面的な観点で検討できる体制を整えます。
4.正式な新様式と運用開始案内を確認する
厚生労働省が今回示したのは調整中の様式案です。
正式な入力項目、システムの利用方法、提出先との関係などについては、今後の国・自治体の案内を確認する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1.2027年4月から事故報告書の新様式が義務化されますか?
2026年10月22日時点では確定していません。2027年4月ごろのシステム稼働予定と、新様式案が示された段階です。
Q2.事故報告書は必ず5日以内に提出しなければいけませんか?
国の標準様式では、第1報を事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出するとされています。ただし自治体ごとの運用を確認する必要があります。また、家族等への連絡や必要な初期対応は速やかに行います。
Q3.事故の原因が分からなくても第1報を提出できますか?
はい。国の標準的な取扱いでは、第1報は判明している事項を可能な限り記載し、原因分析や再発防止策は作成できた段階で報告します。確認できていないことを推測で断定しないようにしましょう。
Q4.全国共通システムができると自治体への報告は不要になりますか?
そのような変更は今回の資料では確認できません。自治体への提出手続きとの関係や具体的な運用について、今後の案内を待つ必要があります。
Q5.ケアマネジャーも新システムに入力する必要がありますか?
居宅介護支援事業所の具体的な利用対象や入力義務については、今回の発表だけでは判断できません。自治体や厚生労働省の続報を確認してください。
まとめ|2027年の介護事故報告は「情報の活用」が重要に
2026年10月21日に厚生労働省が公表した内容を整理すると、重要なポイントは次の3つです。
- 2027年4月ごろから、介護事故情報を一元的に収集する新システムの稼働が予定されている。
- 事故発生前の状態、対応の時系列、原因分析、再発防止策などを整理しやすい新様式案が示された。
- 第1報を5日以内を目安に提出する取扱いは従来から存在しており、2027年の新規ルールではない。
今回のシステム整備は、全国の事故情報を集めて分析し、介護現場の事故防止に役立てることを目的としています。
現場では、今後の正式な運用案内を確認するとともに、日頃の事故記録や情報共有の方法を見直しておくことが大切です。
今後、新様式の確定や具体的なシステム利用方法などが発表された場合には、この記事でも情報を更新していきます。
参考資料・出典
※本記事は2026年10月22日時点の公表資料をもとに作成しています。新様式・システムの運用内容は今後変更される可能性があります。