主任ケアマネのMamoruです。
介護業界に激震が走りました。
「介護ニュースJOINT」の記事をご覧になった方も多いでしょう。
訪問介護の倒産、昨年は過去最多91件 3年連続で記録更新 報酬減や競争激化が直撃 (出典:介護ニュースJOINT)
2024年の訪問介護事業者の倒産件数が過去最多の91件。
記事では「物価高」「人手不足」「報酬減」が原因とされています。もちろん、それは事実です。
しかし、現場でプランを組んでいる私には、このニュースの裏側にある「もうひとつの真実」が見えています。
それは、地域のヘルパーが消えていく一方で、「施設内への囲い込み」を行うビジネスモデルだけが生き残っているという現実です。
今日は、ニュースには出てこない、私たちケアマネジャーが現場で直面している「有料老人ホームの入居条件」や「囲い込み」のリアルな実態について、すべて実話でお話しします。
実態1:「帯(おび)」という隠語が生む、異常な入居条件
地域から訪問介護事業所が減り、在宅生活の限界を感じた利用者が、次の住まいとして
「住宅型有料老人ホーム」を探すことがあります。
そこで、施設側から突きつけられる条件に、私は耳を疑うことがあります。
「要介護3以上で、訪問介護を『帯(おび)』で使っていただける方なら空きがあります」
みなさんは「帯」という言葉をご存じでしょうか?
もちろん着物の帯ではありません。
私は使わない言葉なんですが、「毎日決まった時間に、切れ目なく長時間ヘルパーを入れること」を指す、業界の隠語みたいなのです。
例えば、「毎朝9時から11時まで」のように、毎日同じ時間にガッツリとスケジュールを埋める。
そこには「その人のその日の体調」や「本当にそのケアが必要か」という視点はありません。
あるのは「法人が必要な売上を確保するために、効率よくスケジュールを埋める」という論理だけです。
私たちケアマネジャーが、 「その方の状態なら、そこまでの頻度は必要ありません」 と反論できるか?
現実はNOです。
なぜなら、その条件を飲まなければ「入居を断られるから」です。
- 自宅に帰そうにも、来てくれるヘルパーがいない。
- 特養(特別養護老人ホーム)は何十人待ちで空いていない。
- 病院からは退院を迫られる。
消去法で残るのが「住宅型有料老人ホーム」だけ。
だから私たちは、利用者の行き場を確保するために、断腸の思いで「帯」の条件を飲み、言われるがままのプランを組むしかないのです。
実態2:「デイサービスは疲れるから」という甘い罠
囲い込みは、生活援助だけではありません。リハビリの分野でも巧妙に行われています。
ある利用者が「時々は施設から外出したい。外の空気を吸いたいし、専門的なリハビリを受けたい」と、外部の通所リハビリ(デイケア)を希望された時のことです。
施設長は、優しそうな顔でこう言いました。
「デイサービスへの移動は疲れますから、ご高齢の方には負担が大きいので、利用しない方が良いです」 「その分、うちの施設にいる理学療法士がリハビリを行いますから安心してください」
一見、利用者を気遣っているように聞こえます。 しかし、これは「外部にお金を落とさせないための常套句」です。
実際にその「施設内のリハビリ」がどのようなものか、私たち外部の人間には分かりません。
本当に個別リハビリをしているのか?
ただの集団体操ではないのか?
それがブラックボックス化していても、家族が逐一確認することは不可能です。
さらに最近増えてきたのが「併設の訪問看護ステーションより、リハビリ専門職を派遣するリハビリ」への誘導です。
医療法人の通所リハビリには行かせずに、自社の訪問看護から理学療法士等を有料老人ホームの居室に派遣する。
これなら送迎の手間もなく、法人には「訪問看護費」という高い売上が入ります。
20分~40分程度、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の方は一生懸命部屋の中でリハビリをされていると思います。
しかし、利用者が望んだ「外の社会との関わり」や「専門的な機器を使ったリハビリ」の機会は、こうして奪われていくのです。
実態3:「枠が空いたからプラン変更を」という理不尽
そして、私が最も憤りを感じるのは、施設側の都合でケアプランを書き換えさせられる瞬間です。
ある日、施設からこんな連絡が入ります。
「朝の訪問介護の枠が空きました。今まで施設スタッフで朝の排泄介助などを支援していましたが、今後は訪問介護(介護保険)で行っていただく必要がありますので、来月から計画変更をお願いします。
区分支給限度基準額が超過するのでデイサービスを削ってください。」
信じられますか?
利用者の状態が悪化したわけでも、新たなニーズが生まれたわけでもありません。 ただ単に、「事業所のヘルパーの手が空いたから、そこを売上に変えたい」というだけの理由です。
昨日までは施設の管理費の中で行われていたオムツ交換や見守りが、今日からは「訪問介護」という名目に変わり、介護保険の限度額を圧迫していく。
必要性ではなく、「売上の穴埋め」のためにケアプランが存在している。
私たちは一体、誰のために仕事をしているのでしょうか。
倒産のニュースが問いかけるもの
話を冒頭のニュースに戻します。
訪問介護の倒産が過去最多となった背景には、ガソリン代や人件費の高騰があります。真面目に地域を回っていた小規模な事業所は、コスト増に耐えられず次々と潰れました。
その一方で生き残っているのは、今回お話ししたような「効率的な囲い込み」を行う大規模な施設併設型事業所です。
- 移動時間ゼロ(車もガソリンも不要)。
- 「帯」で確実な売上確保。
- リハビリも看護もすべて自前で完結。
国は「生産性向上」「効率化」を叫びました。
※国が推奨する「効率化」の施策の一つ、ケアプランデータ連携システム。国は導入を進めています。
その結果生まれたのが、この「移動の手間がかかる在宅の高齢者を切り捨て、効率の良い施設内の利用者だけを見る」という歪んだ構造です。
「在宅強化」と言いながら、在宅の要である訪問介護を疲弊させ、こうした「施設ビジネス」ばかりを優遇する今の制度。 そのツケを払わされているのは、選択肢を奪われ、言われるがままのサービスを受けざるを得ない利用者様たちです。
最後に:声を上げ続けよう
今回のJOINTの記事は、単なる経済ニュースではありません。 日本の介護が「支援」から「搾取」へと変質しつつあることへの警鐘です。
現場のケアマネジャーとして、私はこの「実話」を語り続ける必要があると感じました。
有料老人ホームのプランを作成するたびに感じるこの違和感を、飲み込んではいけないと思うからです。
みなさんの地域ではどうですか?
同じような「囲い込み」や「理不尽なプラン変更」に直面していませんか?
もし共感していただける方がいれば、ぜひシェアして現状を広めてください。現場の声を、国に届くまで上げ続けましょう。
介護業界はご覧の通り、倒産や制度改悪のリスクと隣り合わせです。
会社の給料だけに依存するのはリスクが高い時代になりました。私は介護職こそ、自分の身を守るための資産形成が必要だと考えています。
