「ケアプラン有料化」の足音が、ついに現実のものとして近づいてきました。
12月15日、国の審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で出された資料をご存じでしょうか。
そこには、単なる有料化議論以上の、ケアマネジメントの現場を根底から変質させかねない「新しい仕組み」がはっきりと描かれていました。
ターゲットは「住宅型有料老人ホーム」などの入居者です。
国はこれを「新たな相談支援の類型」と呼んでいます。
「施設の話でしょ?一般の居宅ケアマネには関係ないな」とは思わないでください。
これは、すべてのケアマネジャー、そして利用者にとって、ケアマネジメントの大きな転換点になりかねない話なのです。
現役主任ケアマネとして、資料から読み取れる「3つの絶望的な未来」を分かりやすく解説します。
1. 「定額報酬」という名の”手抜き推奨”システム
国は、この新しいケアマネジメントの報酬を、従来の出来高ではなく「定額報酬(サブスク)」にする方向で検討しています。
しかも、その中にはケアプラン作成だけでなく、「生活相談」までが包括的に含まれる見込みです。
これが何を意味するか、現場の皆さんなら想像できるはずです。
報酬が「定額」ということは、「支援に手間をかけない」ことが経営的には一番の正解になってしまうのです。
- 手間をかけるほど赤字になる 「お風呂の回数を増やしたい」「外出したい」……
そんな個別の要望に応えようと調整に走り回っても、報酬は1円も増えません。むしろ時間と労力がかかり、経営的には「非効率」とみなされます。 - 「なんでも屋」扱いの懸念 「生活相談」が業務範囲に含まれているため、本来は施設スタッフがやるべき、苦情やクレーム対応まで、「定額に入ってるでしょ?」とケアマネに押し付けられる恐れがあります。
「頑張るほど損をする」。そんな仕組みが導入されようとしています。
2. 「良いケアマネ」が潰れ、「イエスマン」だけが生き残る
私が一番恐れているのは、この仕組みによって「まともなケアマネジャーが市場から追い出される」という未来です。
住宅型有料老人ホームの仕事は、ただでさえ施設の意向が強く働きがちです。
ここに「定額報酬」と「施設との包括的な連携」がセットになると、次のような淘汰が確実に起こります。
- 利用者ファーストの「良いケアマネ」
利用者のために「もっと良いサービスを」と施設に要望を出したり、入浴時間の変更を求めたりする。
👉 結果: 施設側から「面倒くさい」「業務効率を下げる」と嫌われ、仕事を紹介してもらえなくなるかもしれない(=廃業?)。 - 施設ファーストの「イエスマン・ケアマネ」
施設職員に合わせた勤務スケジュール通りの「コピペのようなプラン」を作れば、文句を言わない。
👉 結果: 施設側から「使いやすい」「協力的だ」と重宝され、どんどん新規入居者を紹介してもらえる(=大繁盛)。
国は「独立性の担保」と言うかもしれませんが、構造的に「悪貨が良貨を駆逐する」世界が目の前に迫っているのかもしれません・・・・
3. ケアマネが「集金係」をさせられる
資料の22ページを見て戦慄しました。
新しいケアマネジャー(新類型事業者)が、利用者から「原則1割の利用者負担」を直接徴収する図が描かれているのです。
これは恐怖以外の何物でもありません。 毎月、利用料を利用者から回収しなければなりません。 「口座振替にすればいい」と行政は簡単に言うでしょうが、現場はそんなに甘くありません。
- 「残高不足」だったらどうする?
利用料金の「引き落としができなかったら、ケアマネが訪問時に集金袋を持って現金を回収するのでしょうか? - 「払えない」と言われたら?
生活が苦しい利用者に「払ってください」と督促の電話をかけ続けるのでしょうか? - 信頼関係の崩壊
私たちは、利用者の生活を支えるためにケアマネになりました。
借金の取り立てをするために資格を取ったわけではありません。金銭のやり取りは、支援における信頼関係を根底から崩します。
まとめ:これは「全ケアプラン有料化」への布石だ
国は今回の導入理由として、「特定施設(介護付き有料老人ホーム)とのバランスを取るため」と説明しています。
どういうことかと言うと、「介護付きホームの入居者は、パック料金の中でケアプラン代も1割負担している。だから、住宅型ホームの入居者も同じように1割負担するのが公平だ」という理屈です。
しかし、これは詭弁です。住宅型ホームはあくまで「居宅(自宅)」扱いです。
それなら、いっそのこと制度上も「施設」に一本化してしまえばいい話です。
都合のいい時だけ「居宅(自宅)」扱いにして責任を逃れ、お金を取る時だけ「施設と同じだ」と言うのは、あまりに不誠実です。
今回の対象は「住宅型有料老人ホーム」ですが、ここで「ケアプランにお金を払うのは当たり前」という既成事実ができれば、次は必ず「一般の居宅(自宅)」にも同じ理屈で有料化が迫ってきます。
「自分は関係ない」では済まされない。
現場の実態を無視したこの議論に、私は断固として反対します。

